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ZATTOMee! ~研究者の投資blog~

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保存効力を高めるためには、どんな点に注意をすればいいの?

 
化粧品試験シリーズ第6弾。
今回は、保存効力を高めるコツについて書いていきます。
単に防腐剤を増やすのではなく、工夫すれば保存効力って高められるんです。

 

どうも。
ひーくんです。 
 
 
気づけばもう9月になってしまいました。
暑さはまだまだ続いていますが、夜は幾分か涼しくなり、多少は過ごしやすくなってきましたね。
 
 
今回の記事では、化粧品の防腐力を高めるために、注意すべきポイントを紹介していこうと思います。
 
 
それでは、早速いきましょう。
 
 
 

防腐力に影響する要因ってなにがあるの?

 
防腐力に影響するものとしては、防腐剤以外にも、次のファクターが考えられます。
 
  • pH
  • 水分活性
  • 原料
  • 容器
  • 使用方法
 
意外と気をつけなくてはいけない要因がありますね。
 
それでは、それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。
 
 
 

なぜ保存効力に影響するの?

 

pH

細菌や真菌には「至適pH」、つまり生育に最も適したpHがあります。
 
もちろん細菌や真菌の種類によって異なってきますが、
一般的に、細菌はpH:4〜9、真菌はpH:3〜8の範囲から外れると増殖しにくくなると言われています。
 
これを受けて、ISOでも、
pH<3.0、pH>10.0は保存効力試験は不要ですよー、と規定しているんですね。
 
 
また、トリートメントによく配合されている4級アンモニウム塩(カチオン)という成分があります。
 
こちらはpHによって発揮する力が変わってくる、つまりpH依存性を持った原料なんです。ほかにもそういった原料があるんですが、それらが十分な効果を発揮する、といった観点からも、pHが重要になります。
 
なお、カチオンは抗菌作用を示すことも知られているので、保存効力に大きく影響します。
 
 
 

水分活性

前述した通り、微生物の増殖には、水が欠かせません。
しかし、製品の構成成分と結合してしまっている水分子(結合水)は生育に利用できず、水として存在する水分子(自由水)が必要です。
 
 
そのため、製品中の水分量(処方のうち、何%が水なのか)ではなく、水分活性(Aw、自由水量を表す)で評価することで、保存効力を推測する際により精度を高めることができます。
 
 
 
では水分活性ってどうやって求めるのか。
簡単に言えば、
容器にサンプルを入れた場合の湿度を100で割った値」が水分活性です。
(嘘みたいですが、これだけです。)
 
つまりは、製品の中に、外に漏れてしまうくらい自由な水がどれくらい含まれているのか、ということを示した数値になります。
 
 
詳細はこちらのHPが大変参考になりましたので、よろしければご覧ください。
 ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓
 
 
 
水分活性を低下させることで、微生物の増殖リスクは抑えられることは、
ISOでも規定されておりますし、Aw<0.75であれば保存効力試験も不要としています。
 
 
しかし、水分活性が低値であっても、微生物が死滅するわけではありません。
滅菌方法に乾燥手法がないように、増殖はしないが死滅しないため、生育条件が満たされれば、微生物は再び増殖します。
 
そのため、水分活性単独で十分な保存効力を担保することは難しく、
そのような化粧品は個人的にはないと思っています。(あったらすみません…。)
 
水分活性については、
「微生物は水が必要だから、水気が少ない方が生えにくい」くらいで理解してもらって問題ありません。
 
 

原料

まあ当然といえば当然ですね。笑
 
原料を少し変えるだけでも保存効力が大きく落ちる、というケースもありますので、
特徴をよく理解して処方に組み込むようにした方が無難です。
(性能面での開発が中心になるかと思いますが、保存効力の面も考慮しておくと楽ですよ!)
 
 
保存効力の観点からすると、特に注意すべき原料は次の通りです。
 
ナイロンやエステル油はパラベンを吸着し、エキス類やアミノ酸類は微生物を活性化させるため、製品の保存効力が低下する可能性があります。
 
 
パラベンやカプリリルグリコールのように、防腐成分の中には水よりも油に溶けやすい性質を持ったものも多くあります。
 
過去の記事にも書いたように、防腐剤は水相に存在しないと効力を発揮できませんので、上記の防腐剤を採用する場合は、原料の投入タイミングなどを十分に検討しなくてはいけません。
 
※過去記事はこちら
 
 
 
またエキス類は、少量しか配合されない場合が多く、軽微な影響として捉えられがちです。(実際現職でも同じ考えの人はたくさんいます)
 
しかしある研究では、微生物の栄養源となるポリペプトンを0.001%配合しただけで、
大腸菌の死滅・減少スピードが著しく減少することも明らかになっているようですので、配合量が少なくとも、栄養源になるものであれば微生物試験の結果は大きく変わる可能性が高い、ということには注意しておくといいと思います。
 
 
コンセプト成分として、エキスが追加、変更になる場合、軽微な変更として侮らず、必ず変更ごとに微生物試験は実施しておくのがベターです。
実務としては負担ですが、省略した場合のリスクが大きいので、そこは企業人として割り切りましょう。
 
少しでも効率を上げるのであれば、例えば微生物試験にて大きな影響を与えたエキスなどの原料をリスト化しておくことで、新しい処方を検討する場合のトラブル回避に活用することができますので、ぜひ検討してみてください。
 
 
 
 

容器

最近では、目を引くようなパッケージデザインにすることで、マーケティング的にも重要な役割を果たす容器ですが、実は容器の材質によっても保存効力が低下するケースもあります。
 
 
容器の材質が、防腐成分を吸着してしまう材質だった場合に、この問題が生じます。
最近はパラベンフリーの化粧品が主流になってきましたので、以前に問題となっていたパラベンしか吸着しない材質であれば問題はないのですが、その他の防腐剤も吸着してしまう材質もやはり存在します。
 
例としてあげると、ナイロン、NBRなどが防腐力を低下させる、とは言われています。
 
 
またフェノキシエタノールについては、
浴室など高温多湿条件下でポリエチレンチューブ等から揮散すると言われているので、
配合されている防腐成分に合わせて、適切機材質を選択できるのが望ましいです。
(私の勤めている会社では、企画が先行してデザインとか決めてしまうので、後々大変な目にあったこともありますが…。)
 
 

使用方法

製品の使用方法によっても、防腐力は変化します。つまり二次汚染ですね。
上記した項目とは少しニュアンスが違ってきますが、これは難しいですね...。
 
 
具体例を挙げるとすれば、
  • 直接手指が触れる製品(クリーム瓶、広口瓶、チューブ)
  • 浴室など高温多湿な場所に置く製品(シャンプー、トリートメント)
  • 詰め替えする製品
などがありますが、これらは二次汚染リスクが非常に高く、防腐力を高めに設定しておく必要があります。
 
 
逆に、次のような製品群は、防腐力が落ちにくいため、防腐力を弱めに設定することも可能です。
  • 手指が触れない製品(ディスペンサー、スプレー)
  • 戻りが少ないバックレスチューブ
  • 使い切り製品(マスク等)
 
ここは二次汚染防止の観点になりますので、実際に想定される使用方法を明確にしたうえで、防腐力が十分かを検討する必要があると思います。
 
 
 

今日のまとめ

 
今回あげた5項目が、化粧品の保存効力に少なからず影響を与えるポイントになります。これらについて十分検討することで、防腐剤の量を過剰にすることなく、安全性の担保された化粧品を作ることができますので、是非このことを念頭において処方開発に挑戦してみてください。
 
企業の観点からも、消費者の観点からも、それが一番望ましい形だと思っています。
 
 
次回は、内容決めていません。
ぼちぼち書いていきます。
 
 
 
 
それではまた。