【セミナー】知財のミカタ 巡回特許庁 in KANSAI
珍しくセミナー参加してきました。(わざわざ有給とってまでして笑)
非常に興味深い内容でしたので備忘録として残しておきます。
どうも。
ひーくんです。
今日は、大阪で開催された
「知財のミカタ 巡回特許庁 in KANSAI」に参加してきました。
大変面白いセミナーでしたので、当ブログのテーマとは少し異なりますが、記事にしようと思います。
「知財のミカタ」ってどんなイベントなの?
毎年特許庁主催で開かれているイベントのようで、全国各エリアにて特に中小企業を対象に知財の活用方法や実例に関するフォーラムが行われているようです。
私も今年偶然見つけるまでは知らなかったのです。
関西エリアでは、今年で6年連続で大阪で開催されているようで、私はたまたま新聞に載っていた広告を見て申込みました。
(他にはどんな媒体でPRされているのか知りませんが…。)
私自身、現在の仕事で特許や知財に積極的に関わっているわけではないのですが、知財に関して詳しくないし、いい機会だと思って申し込んだんですが・・・
・・・大正解でした。
テキストを読んだだけでは十分に理解しきれていなかった特許・知財に関する情報を体系的に理解するには格好のの機会となりましたし、
(知的財産管理技能検定持っている人の言葉とは思えませんが...。苦笑)
何より2019年にノーベル化学賞を受賞された吉野彰先生のご講演を聞くことができたっていうことが自分の中ではすごいテンション上がりました。
吉野先生のご講演内容 ~リチウムイオン電池が開く未来社会~
吉野先生はご存知のとおり、リチウムイオン電池の開発により、社会のモバイル化、およびサステナブル化への貢献と期待が評価され、2019年にノーベル化学賞を受賞しました。
今日の講演では、実際にノーベル賞授賞式の会場で研究紹介に使用したスライドを平易な表現に直した内容でお話いただきました。
ちなみに、先生が発明したリチウムイオン電池の定義(クレーム)は、以下のとおりです。
「カーボン材を負極とし、リチウム含有金属酸化物を正極とする非水系二次電池」
本講演では、日本の歴代ノーベル化学賞受賞者である福井先生(フロンティア軌道理論)や白川先生(ポリアセチレンの開発)の知見があったからこそ、本発明が完成した、ということをおっしゃっておりました。
実際に、ポリアセチレンを負極に用いてみたり、独特の結晶構造を持つカーボン材(VGCF)にて代替することで軽量化・小型化を成し遂げるとともに、リチウムイオン電池を産業化するにあたって致命的であった「安全性」という問題もクリアすることで、実用化・受賞までたどり着くことができたそうです。
先生の研究の大枠を知りたい方は、以下のリンクをご参照ください。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2013/201310tokusyu2.pdf
福井先生がノーベル化学賞を受賞したのが1981年でしたので、受賞から数えても38年。
産業界の研究はやはりこれくらいのスパンが必要なんだ、と先生の話を聞いて今一度実感することができました。
また先生の話の中で印象的だったのが、
基礎研究を経て上がってくるのは、1個の長所と99個の短所を持った成果物である。
この99個の短所を潰していくのが産業化、製品化である。
という言葉でした。
確かに、基礎研究は1点の長所にフォーカスして研究をすすめるので、ほかの観点はおろそかになりがちかもしれません。
しかしその中でも、未完成であることを許容し、それを世に送り出すことを企業人・開発者としての責任であると考えて産業化を実現させた先生の経歴にはただただ感服してしまいます。
ここまでスケールも人間としても大きな大きな開発者の話を聞くのは初めてで、いつも基礎研究に携わってきた者として、自分が作る仕事にの未完成さ、不十分さにいかんばかりか感じていた後ろめたさが、少しは軽くなるような思いでした。
本当にこの話を聞けてよかったです。
吉野先生の研究と特許のおはなし
さて、これを吉野先生が発明したことは確かなのですが、それは世界初だったのか、ということがノーベル賞でも特許の世界でも大変重要になってきます。
その中でも、産業界もしくは企業での研究が論文化されるまでは、5~10年程度の長い時間がかかります。
これほど時間がかかってしまうと、「自分が発明したんだ」ということを論文で証明することが非常に難しくなります。
そこで、吉野先生が活用したのが「特許」だったんです。
今回の件における特許の長所としては、
- 請求項(クレーム)にて発明を明確に定義できること
- 発行日付が明確であり、年次に厳しいこと
などが挙げられますので、活用としては十分期待できます。
ただし注意すべき点として、特許は「新規性」が必須です。
そのため、論文などで報告されているアイデアは特許化できません。ですから企業研究では、研究成果が出たあとでもそのデータの取り扱いには十分注意する必要があります。
下手するとせっかく見つけ出した新規性を台無しにしてしまいかねませんからね。
今回の発明に関して、吉野先生は1985年に特許を取得していましたので、こちらを根拠として審査を進めてもらおうとしていたわけですが、ノーベル賞の審査員は特許を読み慣れていないのでなかなか先生の研究内容が伝わらない、という問題が生じます。
※同時受賞者であるジョン・グッドイナフ、スタンリー・ウィッティンガムらの研究は、
米国の一流ジャーナルにアクセプトされていたようです。
その状況のままノーベル賞の審査の時期に入ってしまうわけですが、同年6月、吉野先生の特許が「欧州発明家賞(European Inventor Award)」を受賞し、ノーベル賞の審査員にも「どうやら吉野先生の研究はすごいらしい、そのうえ世界初の開発者で間違いなさそうだ」ということが伝わり、受賞に至ったのでは、と先生はお話されていました。
(この経緯はあくまで先生の推察なので、本当のところはどうかわかりませんが...。 )
本講演を聞いてみて…
分野は異なりますが、研究者・開発者として世間に認めてもらえる、社会にイノベーションを引き起こすような成果を上げるためには長い長い時間が必要なんだ、そしてその成果・権利を守るために特許が大きな役目を果たしてくれるんだ、ということをひしひしと感じました。
まだ企業研究に携わって5年半、目立った成果もなく正直焦りもありましたが、腰を据えて1つのテーマのプロになりたいな、と思い直す良い機会となりました。
これからも本業に勤しむとともに、こういった形で同じ志を持つ仲間たちに情報を発信していく所存です。
長くなってしまいました。
次回からはテーマを戻して書いていきます。
それではまた。