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保存効力試験をやる時に気をつけたいこと ~水性化粧品編~

化粧品試験シリーズ第5弾。

やっと概論も終わり、実務的な内容を書いていきます。

まずは最もメジャーな「化粧水」「シャンプー」など水性化粧品で試験するときのポイントです。

 

 

どうも。

ひーくんです。



以前の記事では化粧品の大まかな分類を紹介しましたが、今回からはそれぞれの分類について、保存効力試験を実施するにあたって注意するポイントを紹介していこうと思います。

 

※過去記事はこちら 

 ☛保存効力試験ってどの化粧品でも必要なの? - Cosmetic Developer Blog...

 

 

今までの概要とは少し異なり、実務面にも入っていきますので、これから水性化粧品(スキンケア、ヘアケアなど)の試験をやろうと思っている方は是非一度ご覧ください。

 

 

 

微生物が増えるために欠かせないものはなんだ?

 
いきなりですが、微生物が増殖するために必要なものってなんだと思いますか。
 
 
 
 栄養?
 
 温度?
 
 
 
確かにこれらも重要ですが、微生物にとって最も重要なのは、「水」なんです。
 
 
そのため、ほぼ全ての化粧品や食品中でも、微生物は油の多いところにはいきません。
 
 
※もちろん、Psuedomonas属やAlcanivorax属などといった油を好む特殊な例もありますが、これらはタンカー事故など生じた海洋汚染の時に優占的になる菌類ですので、化粧品になることはほとんどないと思いますが…。
 
 
つまり、微生物は水、化粧品でいうところの水層に存在しているのです。
 

 

 

 

微生物は水の中にいる。 ということは...?

 

水性化粧品で特に気をつけなければいけないことは、

 

防腐成分が水層に存在していなければ意味がない

 

ということです。(図1参照)
 
 

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図1  防腐成分が水層にないと保存効力が発揮されない

 

 

これは大前提になるのですが、基本的には水層にいる微生物に対して、保存効力を発揮するには、防腐成分も水層に存在していないと意味がありません。
当たり前のことなんですが、これが意外と難しいんです。
 
 
 

防腐剤が油層に持って行かれてしまうパターンも

何気なく水層に入れているから大丈夫、と思っているケースがよく見受けられますが、
防腐剤っていうものはなかなかいうことを聞いてくれないものでして、
油層を加えて乳化するときに、油層に引っ張り込まれてしまう子もいるみたいです。
 
 
実際に、私が使っていた防腐剤もそのタイプだったことがあり、
2種類の質感の異なるクリームを作っていた際、
同じ量の防腐剤を入れているのに保存効力に大きな差が出てしまう事態がありました。
 
 
これは、2種類のクリーム間で油剤の量が違っていたために、防腐剤が油相へ引っ張られる度合いが異なっていたために生じたと考えています。
このような場合はどうしたら良いのでしょうか?
 
 
 ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓
 
 
私はこのトラブルを解決するにあたり、
「水層に入れるのではなく乳化した後に添加する」という手を打ちました。
 
油層そのものと接触してしまうと、引き込まれてしまうため、
なるべく接触する量を減らすために投入タイミングをずらしたんです。
こうすることで、油層に引っ張られるのを防げないかという仮説の下のトライでした。
 
 
すると、今までクリアできなかった保存効力試験がクリアできてしまいました。
 
 
今回変えたのは投入タイミングだけであり、防腐剤の配合量や種類は変えていません
にもかかわらず、保存効力試験の結果を変えてしまうような影響が出たことは紛れもない事実なのです。
 
 
 
 
考えれば当たり前のことでも、実際はうまくできていなかったり、予想もしない結果が出てくるのが、化粧品評価試験の難しいところです。(特に微生物は...。)
 
同時に、楽しいところでもあると、個人的には感じておりますが。笑
 
(他にも、pHなど化粧品の保存効力に影響する因子はありますが、それはまたの機会に…。)
 
 
それではまた。