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ZATTOMee! ~研究者の投資blog~

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保存効力試験ってどの化粧品でも必要なの?

化粧品試験シリーズ第4弾。

とうとう4回目になりました。

今回は、防腐試験が必要ない化粧品もあるよ、という裏話的な内容です。

 

 

どうも。

ひーくんです。

 

今回は、保存効力試験と化粧品の剤形の関係性について書いていきます。

 

ひとくくりに化粧品といっても、担当している剤形によって保存効力試験のやり方なども大きく異なってきます。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

化粧品と微生物のお話

 

ここ数年、健康食品などを筆頭に健康ブームが盛り上がっていますね。

それに伴って、乳酸菌や酵母といった「微生物」が持つ有用性に大変な注目が集まるようになりました。


しかし化粧品分野では「微生物」はあまり歓迎されていないのが現状です。
前述した通り、化粧品や食品の変敗、変質には微生物が起因しているケースが多いです。特に使い切りの食品などと違い、化粧品は何度も使用するため、微生物汚染のリスクが高くなってしまいます。

 

そこで、微生物汚染による感染症などの不利益や、製品の品質劣化を防止するための保存効力設計が必須になってきます。

 
しかし化粧品のなかには、防腐設計をしなくても十分に保存効力を発揮するものもあります。
化粧品の大まかな分類と合わせてみていきましょう。
 
 

化粧品の分類 ~剤形で分けてみた~

 
化粧品を剤形で分類すると、以下のようになります。
  • 水性製品
    ➡スキンケア系(化粧水、乳液、クリーム)
     メーキャップ系(リキッドファンデ、マスカラ、アイライナー)
     ヘアケア系(シャンプー、トリートメント)
  • 油性製品(ペンシル、リップクリーム、筆タイプ口紅)
  • 粉末・固形製品(パクト、アイシャドー、ルースパウダー)
   
 
 
ちなみに、この表に載っている化粧品はすべて、保存効力試験が必要な化粧品です。
 
剤形によって推奨される試験方法が少し異なったりはしますが、
基本的には、「微生物汚染のリスクがある化粧品なので、保存効力試験を実施して防腐力を確認しましょうねー。」という方針になります。
 
 
 
 

保存効力試験が不要な化粧品ってあるの?

企業や化粧品開発者にとっての保存効力試験の重要性を書いてきましたが、
実務者としては、必要がないのであれば、それに越したことはないですね。
 
 
そこで、保存効力試験が必要ない剤形も紹介しようと思います。
  • 脂肪酸石鹸: 高pH(強アルカリ)+脂肪酸 含有
  • ヘアカラー、パーマ剤: 高pH(強アルカリ)+過酸化水素 含有
  • ネイルエナメル: 溶剤
 
 
これらの化粧品に共通することは、
製品の処方そのものが、微生物を死滅させることができる」っていう点です。
 
 
アルカリや還元作用により菌が生存できない
➡そもそも菌が生えない
➡菌の増殖を防ぐ「防腐」っていう概念もいらない、 ということです。
まあ使い方を間違えればヒトにも有害になりかねないような化粧品には、さすがの微生物も耐え切れないみたいです。
 
 
 
しかしここで1点気を付けてください。
こんな条件下でも、芽胞は死滅しません
 
そのため、製造工程管理による一時汚染対策(清掃、清潔など)は必須です。
過去にも書きましたが、化粧品を微生物汚染から守るためには、一次汚染と二次汚染を防ぐ必要があり、二次汚染を防ぐことが保存効力設計の大目的です。
 
以下、参考記事になります。
 

保存効力試験が不要って誰が決めたの? 

 
…誰が決めたんでしょう。笑
 
 
ISO(International Organization for Standardization国際標準化機構)によると、
ISO29621では以下のような条件が決められているようです。(一部抜粋)
  • pH: 3以下、または10以上
  • アルコール量: 20%以上
  • 水分活性: 0.75以下
ネイルエナメルや染料は無条件で「不要」としているようです。
 
 
 
しかし上記の数字を守っていれば全く問題ない、というわけではないのが微生物汚染の厄介なところです。
 
 
例えば水分活性について考えてみましょう。
製造・出荷時の水分活性は0.68(≦0.75)、ISOに基づき保存効力試験未実施で問題なしとした。
ところがその後、お客様から異臭がするとのクレーム返品があった、というケースは実際に生じています。
 
この事例の原因は、私の推察になりますが、「吸湿」が一番の原因かと思います。
前述しておりますが、化粧品は繰り返し使用するものですので、何度も使用する中で空気中の水分を吸湿して水分活性が高くなり、微生物汚染が発生したものだと思われます。
 
 
また口紅やリップクリームなど、口腔周辺に使用する化粧品については、唾液や口腔内の細菌による使用時の汚染なども考慮する必要が出てきます。
 
 
このことから、ISOはあくまで参考であり、順守していれば問題ない、というわけではない、(ややこしい二重否定になってしまった)ことは覚えておいてください。
 
ただし、ISOは国際的に化粧品試験について議論してできた基準となりますので、
試験系を組む際などは大変参考になります。
あくまで「鵜呑み」は避けてくださいね、ということですので。
 
 
 
 
 
 
 
今回は結構なボリュームになってしまいました。
 
次回は、具体的にどんなことに注意して試験すればよいのか、
化粧品の分類ごとに書いていこうかと思います。
 
それではまた。