保存効力試験はどんな菌株で評価するの?
化粧品試験シリーズ第二弾。
今回は保存効力試験で使う菌株の紹介です。
こいつらに負けない化粧品を作るのが我々のミッションです。^^
どうも。
ひーくんです。
今回はタイトルにもあるように、
「保存効力試験」に使用する菌株についてお話したいと思います。
(保存効力ってなんだ?って方は、こちらの記事をご覧ください)
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どんな菌株が使用されているの?
早速ですが、保存効力試験に用いる菌は、次の5種類です。
※以前はA. niger(黒コウジカビ)が使用されていたみたいですが、現在はA.brasiliensisに統一されています。試験受託機関のHPなどにもその名残が残っているみたいです。
覚え切れなくてもぜんぜん大丈夫ですので、次に進みましょう。
これらの菌の特徴としては、
比較的身近に存在する菌であり、化粧品の日常使用にて混入する可能性のある菌ということです。
また上記の菌株は、以下のとおり「細菌」と「真菌」に分類されます。
細菌(一般的な微生物):E.coli、P.aeruginosa、S.aureus
真菌(カビとか酵母とか):C.albicans、A.brasiliensis
ちなみに、A.brasiliensisは人に対する毒性が強いので、試験を実施する際はGMPに則って実施しましょう。(試験実施の際の基本的なルール確認は必須です!)
化粧品の微生物汚染って?
「今使っている化粧品に、カビが生えるなんて考えられない!」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、化粧品・医薬部外品の微生物汚染による回収事例をみてみると、
2016年以降に限定しても、年に数件~10件程度発生していることは紛れもない事実であり、ヘアケア製品から化粧水、洗顔やマウスウォッシュに至るまで、様々な剤形の化粧品・医薬部外品が「微生物汚染」というトラブルに見舞われています。
(尚、2020年に入ってからもすでに微生物汚染によって、7万個以上の化粧品が回収されています。それくらい発生する可能性が高いトラブル、ということは念頭に置いといてください!)
加えて、トラブルの半数以上がカビによるものであることも注意すべき点です。
カビは有色のコロニーを形成するため異常が見えやすく、消費者も比較的気付きやすいですが、細菌などは変臭や変色が起こらないこともあり、気づかれない可能性があります。
そう考えると、「実際はもっと多くの化粧品で微生物汚染が発生しているのではないか…?」という恐ろしい仮説を考えることもできるからです。
上記の仮説をもってしても、さすがに発生件数が倍になるとは考えにくいですが、少なくとも現在もある程度の件数が発生しているトラブルであり、このトラブルを出来る限り起こりにくくするという目標のもと、実施される試験が保存効力試験なんです。
こうみると、すごく有意義で、会社の利益を守る重要な試験な気がしませんか?
保存効力試験はこの5菌株で問題なし?
上記した菌株たちは、ISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)や日局法にて規定されているので、多くのメーカーはこれらの菌を用いて保存効力試験を実施しています。
しかし一方で、これらの菌株にくわえて、自社株にて試験を実施しているメーカーも多数存在します。
そんなメーカーは自社株として、どんな菌株を使用しているのでしょうか?
答えは、
自社製品から検出された菌株
です。
製品からはもちろん、クレーム品から単離されたものや、製造工程から分離された菌なども検討をした方が良いと、化粧品GMPでは記述されています。
実際に前職では、クレーム品から単離された菌を試験対象にしていました。
先日の記事に、一次汚染は保存効力試験の対象ではない、と記載しましたが、
今回の「製造工程から分離された菌」というのは、製造工程上避けられない菌であり、
清掃などによって除去できる菌は対象外であることに注意が必要です。
(詳しくは、下記の記事をご参照ください。)
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ちなみに、化粧品業界ではほとんど該当しませんが、シロップ剤や経口液剤など特定の剤形には、特定の菌が増殖しやすかったり、世界的に問題になっているケースもあるようで、追加で菌株が指定されています。
今回のまとめ
化粧品は食品と同じく水分が多いために微生物が繁殖しやすい製品であるのに加えて、
開封後の品質保証も企業責任となるため、微生物が増殖しない処方設計は必須です。
そのために、二次汚染の原因となりやすい菌株に加えて、自社製品で検出される可能性のある菌株に対する化粧品の保存効力を評価することで、二次汚染をある程度防ぐことが期待できます。
保存効力試験を実施するにあたり、対象となるサンプルを使い切るまでに、増える可能性がある菌については、増えないことを確認しておく必要がある、ということですね。
今回はここまでにします。
次回は、試験の対象となる製品の考え方についてでも書こうかな。
それではまた。